豪徳寺の家で一息ついて、 私はまた立ち上がった。 用意したボストンは僅かに重い。 洋服は動きやすいものをチョイスして。 「行ってきます」 誰に言うんでもなく、私は微笑んでこの豪邸を去った。 別れ際に 畳の香りだけが 、静かに薫った。