私がくすくす笑うと
りささんは呆れたように口元を笑む。
「そうね…
私も探したわ…。
山葵を辞めて転々としながら…
私だけの天国をね…」
あんな汚い世界で生きてきて
何をと私は心中嘲るけども
彼女の綺麗な瞳は
もう何かを見つけた後のようだった。
「間もなくー下北沢ー下北沢ー」
電車のアナウンスは別れを告げる様に急かしたらしい。
りささんはすたりと席を立ち上がって
私をじぃと見た。
「短い間だったけど楽しかったわ…まりちゃん…また…遊んでくれる?」
その澄んだ真っ直ぐな瞳に、
私は笑う以外に術を持たない。
扉が開くのと同時に
勝手に私の唇は動いた。
「りささん…一ついい事を教えてあげます」
彼女はゆっくりと私を振り返る。
まるでここだけ時間が止まった風に。
「天国なんかこの世のどこにもないんですよ」