「私…誰かと付き合ってなかったっけ?」

―――ビクッ

お母さんはいきなり目線を逸らした。

明らかに動揺してる。

「…誰かと、付き合ってた?」

「うん、すごく好きだった気がする」

「それは、ただの気のせいよ。彼氏は龍クンでしょ」

…本当かな?

でも、覚えてないって事は、大切じゃなかったって事だよね。

気のせいかな。

「そうだよね、変な事言ってごめ…え?」

お母さんは泣いていた。

ただ、泣いていた。

「…っ」

「ちょ…お母さん!何で?」

「ごめんっ…気にしないで」

「気にしないでって…」

無理でしょ!?

自分の親が泣いてんだよ!!?

「ごめんね…沙羅」

「???…うん…?」

取りあえず頷く。

私に何か隠してるよね…絶対。

でも、私は空気を読んで聞かないことにした。

そのうち分かるでしょ?

うん、分かる分かる…。

「沙羅、食べたい物ある?」

いつの間にか涙を拭いてるお母さん。

何なんだ…?

「じゃあ…プリン♪」

…そのうち分かる、ハズ…。