「それで、あなたを思い出すとあの事も思い出すんですって」

「あの事?」

「…男恐怖症になった原因よ」

「…」

「だから、このまま会わないで、姿を消して」

「そんなっ!!」

「沙羅が男恐怖症でどんなに苦しんでたかあなたに分かるの!!?毎日、辛い思いして学校に通っていたあの子の気持ちがあなたにっ!!」

「沙羅…っ」

「あの子が忘れたのは嫌な記憶なのよ!?無理に思い出させたって可哀想なだけじゃない!」

「…っ!!」

もう止めろ…!!止めてくれ!!

「あの子には、会わせない。沙羅の事が本当に好きなら、このまま黙って帰って…2度と沙羅に会いにこないで」

俺が会わなければ、沙羅の男恐怖症は無かった事になる。

だけど、俺の事も忘れたまま…。

…待てよ…?

「沙羅は…俺が嫌いだったって事ですか?」

「知らないわよ!…そうじゃないの!?」

そんなわけねぇ…。

「沙羅が俺を嫌いなわけねぇ!!」

「っ…」

絶対、そんなわけ……。

「とにかく、帰って頂戴。さようなら」



そう、信じたいのに。

俺なんか、沙羅の近くにいる資格…無いのか?

だったら…。