「涼子は藤木先生のこと好きじゃなかったの」

「好きだよ」

「じゃあなんで」

「邪魔されたくなかったから。だってばれたら退学なんだよ。藤木先生と会えなくなっちゃう」

「…涼子。斎藤にいいようにされてるって自分で気付いてる?」

「いいの。あたしのことは」


そう言って自嘲するように薄笑いを浮かべる涼子が遠い存在に感じた。

まるで裏切られた気分だ。

俺が七瀬先生を想うように、涼子が藤木先生を想う気持ちはずっと一緒だと思っていた。

仲間だ、と信じていた。


「どうかしてる」


並べられたふたつのマグカップは窓の隙間から吹いた風で冷え切っている。






「涼子は狂ってるよ」