「ゆすられたんだな」


涼子は少しの間を空けて頷いた。


「“このことは誰にも話さないから俺の相手もしろ”って」

「あンの変態教師」


俺はマグカップを乱暴に置いた。

斎藤は生徒に手を出すことで有名だが、中には生徒の弱みを握って従わせているという噂もあった。

まさか涼子が標的になるとは。

でも、と俺はすがる思いで涼子を見つめた。

俺は知っている。

弱みを握られたからといって涼子は簡単に受け入れるような女じゃない。


「当然断ったんだろ。いくら退学になるっていってもさ…」


しかし涼子はうつむいたまま答えなかった。

予想していなかった反応に背筋が凍りつく。

嫌な予感がした。


「涼子、まさか…」