どうしたの、とその低い声であたしは目が覚めた。

見ると彼はいつの間にシャワーを浴びたのか濡れた髪を白いタオルで乾かしていた。

あたしはベットから降りて冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを彼に渡した。


「ありがとう」


彼は薄く笑みを浮かべて黒縁眼鏡を押し上げる。

あたしがベットに戻ると、彼もその隣に腰掛けた。


「今日は元気がないね」

「そんなことないよ」

「ふうん」

「なに」

「いや…」


ふいに、唇に生温かい感触が重なる。

石鹸の香り。

彼の華奢な手はあたしの肌を露わにし、ゆっくりとあたしの中を貪るようにかき乱す。

段々と激しくなる吐息。

漏れる呻き声。

古いベットが音を立てて軋む。

あたしは彼に抱きしめられながら、天井の鏡を通してあの時の自分を思い出していた。