そう…18年前――


朝倉さんが娘さんの遺骨を持参して、墓を建てるまで預かって欲しいと言われた時の事です。

私は事の成り行きを聞き、その怨みの深さと余りに非道な話に、朝倉さんの左手と引き換えに呪怨の術式を使ってしまったです!!」


住職は俯いたまま背を向けた。


やはり、順子の推測の通りだったのか。でも、でもそうだとしたら――


私は住職に言った。
「住職がその秘伝書の術法を使ったのならば、取消す事も出来るのではないのですか?」


「出来ません…」

住職は背を向けたままで、首を横に振った。


「人知を超えた術法に、人間がそれ以上干渉する事は不可能です…

もうその術式の効果が消滅するまで、待つしかありません。


この状況を旧密教では圏外と呼び…

止むを得ない場合以外は、絶対に作り出してはいけない空間とされています」


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