順子の後を、追わなければ――


頭を下げて通り抜けようとする私に、順子の母が話し掛けてきた。

「さ、小夜子ちゃん…
その全身の傷は……」

私はどう説明して良いのか分からず考えていると、順子の母が俯いて話し始めた。

「そんな筈は、ないとは思うけれど…


あのカルテの患者は、今から18年前…まだ私が若かった頃の患者さんよ。

脳腫瘍を患っていたのだけれど、当時の医療ではどうする事も出来なくて、20歳の若さで亡くなったの。


その時の悔しさを忘れない様に、自分に対する戒めの為にコピーしておいた物なのよ。

朝倉さん…か」


一通り話は聞いたものの、私はカルテの経緯よりも、順子の態度の方が気になっていた。

「順子と、何かあったんですか?」


「記憶の事…
でも、これは2人の問題だから」

順子の母は、それ以上話してはくれなかった。


記憶か…


私は順子の元に向かった。


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