黒い厚紙の表紙――

茶黄色に変色した紙は、何年も捲られる事もなく眠っていたのだろう。

ページを開く度に、パリパリと音がして剥がれていく…


カルテの日付は、今から18年前…
患者名は朝倉……



朝倉 舞子――!!



私達は患者名を見て、手が止まった。


「舞子…」
順子が呟いた。

病名が脳腫瘍という事以外は、カルテはドイツ語で書かれていて全く読めない…


「そういえば…」

順子が何か思い出したのか、不意に口を開いた。

「さっき、母さんの部下が妙な事を言ってたよ…

母さんがまだ若かった頃、患者を死なせてしまった事があるって。

もしかしたら、これが――」



その時、背後で扉が開く音がした。


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