どうやら失恋の曲で、メロディを聞いても歌詞を聞いても涙が出るような曲なのに彼女の歌声は不思議とそのような気持ちにはさせなかった。



むしろそれとは逆に希望に向かっている、新しい恋にわくわくしている、そんな含みを持っていた。





彼女の表情はさっきのように悲しみで満ちたものではなく、爽やかで、歌が、音楽が、好きで好きで堪らないというような―――。





まだ数が少ないセミたちも彼女の歌に聞き入っているのだろうか。



彼女の歌が静かに響く。