静寂が満ちる。 彼女はじっとこちらを見ていて、その薄い唇は動きそうにない。 ふと地面に目を落とすと蟻の軍隊がせわしなく行ったり来たりしていて、意味もなくそれを目で追った。 心地いい風が吹いて、木の葉がざわざわと擦れあう。 沈黙に混じるように彼女が静かに話し出す。 「なんでここにいるの?」 風で乱れた前髪を片手で軽く直した。 「なんでって…」 咄嗟になんて答えていいかわからなくて言葉につまる。