「あたし手伝ったよね?」
有無を言わせない彼女の言い方に俺は戸惑いながらも頷く。


「じゃあ今度は晴樹くんがあたしを手伝ってくれる番だね」
彼女は自分の鞄をひょいっと持ちあげ
「明日の放課後。HR終わったら音楽室に来て」
と言うと俺の返事も聞かずに走り去った。


彼女がいない教室は忘れかけた暑さを呼び戻す。
ジーーー、ジーーー。
せっかちなセミが寂しそうに一人鳴いた。


もうすぐ熱い夏が来る。