もし私が、気づけていれば・・・
別の道も、出来ていたの――?
それとも、これは必然だったのかな?
何も知らずに、ただ好きだった頃には。
もう戻れないと、改めて伝えるために・・・
社長室へ掛かってきた、電話の相手。
それは・・・・
「佐々木さん、こんにちは。」
「後藤社長――!
先日は、大変お世話になりまして・・・」
受話器越しであっても、どこか爽やかに感じる声。
私は会食のお礼と、挨拶をしようとした。
「いや、堅苦しい挨拶はいいよ。
この前、十分お礼は言って貰ったしね?」
「え…、あ、の・・・」
畳み掛けるような声を、受けてしまって。
まだまだ、対応に不慣れな私はドギマギ。
社長秘書なのに、ホントに力不足・・・