颯爽と走り抜けていく、赤のフェラーリ――
軽快なエンジン音とは、反比例している私の心。
その原因は、至って冷静な社長のせい。
無言の車内が、想いを増幅させるから。
黒いハンドルを捌く、骨ばった長い指先。
その手になぞられていたのが、ウソみたい。
抱かれたことが、夢だったと錯覚しそうなほどで。
もう用済みの私なんて、気にも留めてくれない。
「・・・っ」
涼しげな横顔に、悔しさと切なさが募る。
それが意味を為さない行為だと、知らしめているようで――
社長の横顔から、ゆっくりと視線を戻す。
・・・あくまで自然に。
心とは裏腹に、業務的な自身の態度に嫌悪感を覚えた。
辛いと思いつつも、結局は甘んじていて――
こんな自分は、ダメ人間だと思えてならない。
自然と拳をつくり、ギュッと握り締めていた。