重い気分を携えて秘書課を出たあと、社長室の前に再び立った。
眼前にはキッチリと閉ざされた、ブラウンの重厚なドア。
私と社長のキョリを表すような、あまりに大きな隔たり…――
この扉の先で待つモノは、また苦しさと虚しさだけで。
だからこそ、心はグッと締めつけられているというのに…。
「っ・・・」
それでも自らの手は当たり前のように、ドアノブへと向かっていた。
引き寄せられて想いが増すと知りながら、なぜなの…?
刹那に満ちた、この儚い想いだけが募るのに・・・
どうすれば私は、貴方に抗えるの――?
どうすれば一体、貴方を忘れられるの――?
どうすればこの契約は、無くなるの――?
社長のキモチは、別へと向いているのに・・・