するとスルリと手の絡みが解かれ、拓海の手は私の頬を撫でた。
「ホントに泣き虫だな…」
「っ・・・」
フッと一笑する顔つきは、アノ頃へとタイムスリップしたようで。
そんな表情をされると、涙は余計に止まらないのに・・・
「佐々木家は東条にとって大切な従者であり、家臣でもあった。
佐々木家は一生を賭けて仕える事…、東条は佐々木家を守り抜く事…。
代々そうして、最良の関係を気づいていた事は知ってるよな?」
「う、うん・・・」
ブラウンの瞳で見下げたまま、いきなり齎された両家の歴史。
突拍子の無さに、頷くコトしか出来なかったけれど。
「だからこそ佐々木家には、主君に仕える嫡子の誕生が絶対だった。
関係の始まり以来、崩れるコトが無かったと言うのに・・・
一人っ子の蘭が、その歴史を覆してしまったんだ」
「わた・・し?」
零れる涙で歪む視界のまま、首を傾げて尋ね返した。