え・・・だって、貴方は――
「佳奈子、離せ――!」
後藤社長の胸へしがみつき、彼を止めようとする佳奈子さん。
「それは出来ません!
もうムリです…、止めて下さい――!」
泣きながら頭を振る彼女に、私は頭が真っ白になってしまう。
だって貴方は、拓海の婚約者でしょう・・・?
「くそっ――!」
押し問答の末、後藤社長はドカッとソファへ腰を下ろした。
佳奈子さんも所在無げに、伏し目がちで彼の隣に座る。
「立川 佳奈子さんですね?」
すると落ち着きを取り戻した所で、拓海が彼女をジッと捉える。
「はい・・・」
か細い声で返事したあと、深々と一礼をする佳奈子さん。
その光景はまるで、2人が初対面のように思えてしまう。
彼女に再会したコトで、恐怖が募っているというのに。