その表情には、何を隠し持っているというの――?
「は、何がだ?」
訝しげな表情のまま、嫌悪の視線を向ける後藤社長。
「そちらに伝わっている時点で、おかしいのですよ。
私の内部事情を知る側近者は、数名ほどいるが…。
予め、すべてにおいて“守秘義務契約”を結ばせている。
そして婚約者の話を知る人物は、その中でも2名だけ。
探りを入れてしまえば、すぐに判明したが…。
貴方の元・部下である、立川 悟(タチカワサトル)だと――」
後藤社長に怯むどころか、とんでもない爆弾を投下した拓海。
「っ・・・!」
ウソ…、立川さんがスパイ・・・!?
拓海の言葉で、愕然としてしまった私。
立川さんは27歳という若さながら、すでに部長職を務める社員。
3年ほど前に転職してきた彼は、みるみるうちに頭角を現したため。
将来は社長のブレーンになると、周りから囃したてられていて。
その彼がまさか…、産業スパイだなんて――