その視線に嫉妬するなんて、浅薄だというのに・・・
「東条君と蘭が一緒にお出ましとは・・・
一体、どういう風の吹きまわしかな?」
彼が深く身体を鎮めると、本革のソファがギシッと音を立てた。
「っ・・・」
フッと嘲笑する顔つきで、縺れたままの鎖はさらに絡みゆく。
ベルガモットの香りが充満する社長室は、泰然とする主を援護するかのよう。
「突然のご訪問にも関わらず、お会い頂けて感謝しております。
先ず、その点にはお礼申し上げます…」
ソファから立ち上がると、そうして一礼をした拓海。
「堅苦しい挨拶は苦手だと、何度も言っただろ?
早速、キミの用件を聞こうか・・・」
「えぇ、そうですね――」
挑戦的な切り返しをして腰を下ろすと、後藤社長を眺める拓海。
端麗な二つの顔に何も見い出せないまま、俯き加減で座る私。
いわゆる奇襲攻撃ともとれる状況なのに、至って平素な後藤社長。
敵陣へと乗り込みながら、ポーカーフェイスが崩れナイ拓海。
私たち3人を取り巻く環境は、あまりにもイビツすぎる――