バタンッ――
社長に続いて車外へと出ると、車のドアをゆっくりと閉めた。
「え…、ここは・・・」
そうして眼前の光景に眼を奪われ、言葉を失ってしまう。
デザイン性に富んだ、緩やかな曲線を描くスパイラルタワー。
東条グループ本社より以前に、話題を攫ったアノ会社だった・・・
「フッ…、“敵は本能寺にあり”かな…」
「ッ――」
社長の一笑を受けて、心臓は大きくドクンと波打ち立ってしまう。
その言葉で脳裏をよぎるのは当然の如く、後藤社長という人物で。
3日前まで占領していた恐怖が、今さら押し寄せて来た。
厳かな佇まいによる、イヤな圧迫感に苛まれて・・・
「蘭、行くぞ――」
「あっ、ハイ・・・」
佇む私に声を掛けたあと、颯爽と闊歩していく社長。