あんなにも必死にしがみついていた、広くて厚い胸だけれど。


真実を知ってしまった私は、手を伸ばすコトが出来ない。



だって貴方は…、秘密の部屋での行為を彼女に告げていたから。




妾という日陰の存在以下であり、玩具物なのだと知らされて――





「っく・・・ひっ・・」

悲しみだけが渦を巻き、過呼吸に陥りそうなほど苦しい嗚咽。



「蘭…、いい加減にしろよ――」

辺りに重く響き渡るくらいに、ワントーン低い拓海の声色。



いい加減にしろって、貴方はどうなの――?



「っ、拓海は…勝手すぎっ・・・

婚約者と一緒に・・・裏切ってたクセに・・・っ!

私ももうっ…、結婚するからっ、イイ…――」

たじろぎそうになりつつも、負の言葉を発し続けて。




「拓海なんて…大・・キライ・・・」


“チガウ”という言葉に攻め立てられつつ、必死に吐き出した。




自らの進退を投げ討つだけの、終曲でしかナイのに――




「ハッ…、そんなの信じる訳ないだろ?」


「ッ――!」


一蹴するような笑いで、バッサリと断ち切られてしまう。