ツーと伝い落ちる涙だけが、無上な悲しみを募らせていく。
逃げるという選択肢があるのなら、その前に拓海にキモチを伝えたい。
だけれど現状は既に、未来への足掛かりとなっているのに。
もう…、どうするコトも出来ないよ――
すると屈強だった腕の力が弱まり、両肩に手を置かれてキョリを作られた。
街頭にぼんやりと照らされつつ、こちらを見下げるブラウンの瞳。
私に込み上げるのは、揺るがない貴方へのキモチだけ・・・
「いいか…、その頑固さも大概にしておけ。
俺の気持ちを知っていながら、どうして勝手な事をする?」
「ッ――」
その言葉に、婚約者の声が重なって聞こえた。
キモチなんて…、まやかしのクセに――
「っ…、拓海・・最低だよっ・・・」
堪えきれずに私は、本音を漏らしてしまった。
「何が――?」
冷静な物言いで、ジッと私を捉えたままの拓海。
「ひど、い・・・」
ポツリ、ポツリと呟いてしまうのは、貴方への罵倒で。
溢れる涙のせいで、ボヤけていた視界がさらに濁っていく。
妾としてしか、見ていないクセに…――