本当に拓海は、どうしたというの…?
だけれど考えてみれば、拓海の何を知ってるの?
ううん…、小さな頃から何も気づいていなかった?
私は拓海のコトを、知らなさ過ぎる――
「っ・・・」
改めて知った彼の一面で、寂しさと虚しさが募っていく。
幼馴染みなんて、所詮は上辺だけのモノ・・・
少なくとも私と拓海は、ピタリと該当してしまうもの。
何も知らないままで、キョリだけが広がっていたというのに。
それでも貴方を勝手に、愛してしまうなんて――
鼻腔を掠めるホワイトムスクの香りが、切なさを増幅させる。
抱き締めてくれる腕の力が、想いを増していくのに…。
「ハハッ、それは面白い――」
拓海の敷いた琴線に触れるように、一頻り笑う後藤社長。
「まぁ、いい・・・
東条君の顔を立てて、一先ず帰ることにする…。
蘭…、解っているな――?」
「っ――」
最後の最後で、彼の脅迫がズシリと胸に響いてくる。
このまま厚い胸へと縋れるのなら、どれだけ幸せだろう・・・