アノ時が私たちに標された、岐路の始まりだったけれど。


今もこうして、別の道を辿っている最中というのに。


交差点など、果たして出来るのか・・・?




「拓海…、話したい事があるの」


「何だ・・・?」


スッと離れた手が、私の心をグッと決心させた。



ブラウンの瞳、甘いホワイトムスクの香り・・・


それらすべてに、優しく包まれながらも――



「私…、後藤社長との結婚は止めるね。

これから彼に、会いに行って伝えて来ます。

私の気持ちは、やっぱり変えられないから。

どうなるのか、分からないけど・・・」


「・・・は?」

意味不明だと言わんばかりの、訝しげな表情をされた。



「確かに、伝えないコトは罪かもしれない。

だけど…、それですべてが崩れるコトもあるの。

それに結婚は、私と後藤社長の問題だから・・・

だから、解決するまで何も言わない…」


「・・・・・」

予想外の言葉を受けたせいか、無反応の拓海。



どうか、そんな表情をしないで・・・


涙を堪えつつ、ベッドから抜け出した私。



秘密の部屋を、先に退出する日が来るなんて――