ホワイトムスクの香りと、温かい胸に収められた私。


先ほどまでの余韻と辛さが、一気に押し寄せてきた。


「っ…、うぅっ・・・」

止まらない涙が、嗚咽までもを引き寄せていく。



我慢に我慢を重ねて、やっとウソを吐けたのに。


貴方への気持ちを、封じたハズなのに。


別離をやっと、告げるコトが出来たのに。



キライは私の、最大の忌み言葉だったのに・・・



「っ…、ど・・して・・」

彼のシャツを握り締めて、ポツリと呟いた。



どうして私は、最後までウソを突き通せなかったの?


どうして拓海は、離してくれないの?



どうして吐き出せなんて、言うのよ・・・



「っ…たく・・み・・」

引き寄せられたまま、厚い胸へと身を預けそうになる。


其処は温かくて、安心出来て、求めて止まないモノ。


それでも、ダメなのにね・・・



「っ・・・」


絶望の淵に立たされるって、こういうコト?



何も言えないうえ、その手を受け取る権利はナイ。


何度となく、そう悟ったクセに・・・



皴を作ってしまうほど、握り締めたシャツから手を放した。