ギュッ――
強く、強く、拓海の胸に収められている。
熱を帯びたホワイトムスクの香りは、濃厚な蜜のよう・・・
「っ・・・」
涙が止まらず、何も言えない自分が腹立たしい。
もうこれ以上…、引き寄せたりしないで?
この温かさと安らぎは、狂わせる手助けになるの――
「今まで…、分からなかったのか?」
「何がっ・・・?」
鼓膜を揺らすような声が、また期待を膨らませる。
ドクン、ドクンと激しい鼓動も、援護するかのようで。
貴方の肌に触れていると、ストッパーなど消滅してしまう。
封印させたハズの想いが、溢れ出そうだよ・・・
「俺はオマエを…」
「っ…、やめて――!」
ゆっくりと紡がれていた言葉を、声を荒げて遮った私。
「蘭・・・?」
怒気を含まない声色で、名前を呼ばれたあとで。
引き寄せていた腕の力は弱まり、キョリが少し広がった。
彼の両手によって、手首を押さえつけられた状態に変わる。
否が応にも注がれる視線もまた、無力な私を捕らえて・・・