ギュッと引き寄せられて、互いの心音が共鳴していく・・・
「っ…、たく・・み――」
「なに…?」
名前を呼ぶコトさえ、愛しくて仕方がなくて。
温かい胸板へと、このまま縋ってしまいたい――
「っ・・・」
視界を揺らすように、ジワリと沸き出始めた涙。
貴方を愛しているのに、別離など望むワケがナイ。
人として相容れない後藤社長と、結婚したくナイ。
出来ればずっと…、貴方の傍にいたいの。
「ごめん・・・ね・・」
「…え――?」
頭上から聞こえた探るような声が、涙をまた誘う。
心をググッと、引き寄せられるけれど・・・
「…け、結婚…、します・・・」
どんなに欲しても、所詮は独り善がりだもの。
「…っ、ごめんなさい…」
各々(おのおの)の道が、既に示された中で。
曝け出すコトも、伝えるコトも出来ないよ――
「ダメだ…、俺の気持ちはどうなる?」
「ッ――」
腕の中からすり抜けようとした時、再びグッと引き寄せられた・・・