“もう…、遅い――?”
ポツリと呟かれた言葉に、目を見開いてしまった。
それが意味するモノは、何なの――?
「っ・・・」
怒涛のように押し寄せる感情が、私の心を侵食していく。
ブラウンの瞳を眺めていると、引き寄せたくなる。
はだけたシャツから覗く、厚い胸板に縋りつきたい。
アノ頃と重なるほどの優しい声色に、想いを伝えたい。
自分に都合の良い解釈をして、トキを進めて欲しくなる――
拓海への揺るがない想いが、全身を埋め尽くしていようとも。
問い掛けに即答など出来るワケもなく、此処でも黙り込んだ。
この先に待つモノが、容易に想像つくから・・・
貴方が欲するのは、妾という存在の私であって。
手元のコマが突然に寝返る恐怖が、彼に巣食ったのと同じで。
それはただ…、夢物語を追い求めているにすぎないの――
「俺から…、離れていくな――」
「っ・・・」
ギュッ――
だけれど、儚いほどの悲痛な声色で、囁かれてしまうと。
しなやかに、でも着実に、その答えを責め立てていく・・・