否定されて、蔑まれて、罵倒されて。
そうして貴方の許から、去るハズだった。
社長には婚約者がいて、私には後藤社長がいる。
未来を壊さない為の、応命なのに・・・
「っく…、うぅっ・・・」
秘書の体裁も失った私は、地面にペタンと腰を下ろした。
自分のキモチにも、“今”というトキでさえも。
すべてに靄(もや)が掛かって、何も見えないよ・・・
「ハァ・・・」
頭上から聞こえるのは、冷たい溜め息で。
それは過去を奪えるほど、威力があるモノだ。
「蘭、もう一度言うぞ?
顔を上げろ・・・」
「っ…、や・・です・・っ・・」
清涼なトーンの声に、頭を振って抗ってしまう。
“現実”を、受け入れ難かったからなのに――
「そうか――」
「っ――!」
顔を覆ったままでは、表情など読み取れない。
その一言の次は、何を齎されるの・・・?