引き寄せられるように、私の身体は社長室へと入ってしまう。
バタンッ――
社長は掴んでいた手を離すと、社長室の扉を閉めた。
そうして外気を、遮断してしまえば・・・
「っ・・・」
途端に静まり返った、異空間が出来上がってしまう。
それはただ、苦しさが増すだけなのに――
「あのっ…、社長?
キャンセルとは・・・」
一刻も早く、沈黙を切り裂いてしまおうと。
秘書の仮面を纏って、必死に笑顔を作った。
決心したからには、もう泣けないもの・・・
「言葉の通りだろう?」
そんな私の想いなど、知る由も無く。
社長室のドアに凭れ掛かって、こちらを眺めている。
鋭い視線は針のようで、チクチク痛みを覚えた。
「でっ、ですが・・・
スケジュールを崩す事などっ――!」
だけれど、今の私は秘書だから。
会社にマイナスを齎すコトなど、許されない。
社長のスケジュールを、管理する者として・・・