「・・・社長?」


震える手でどうにか、カバンを差し出したというのに。


社長は一向に、受け取ろうとはしない。



どうして良いか分からず、待っていると・・・




「蘭・・・」


「ッ――!」


突然呼び掛けられて、心臓が踊るように鼓動した。


その優しさを帯びた声で、恐る恐る見上げた私。




すると、声色とは裏腹というか・・・



憮然とした表情で、ジッと私を見下げていて。


ブラウンの瞳でさえも、オブラートには包めておらず。



そんな怒りを秘めた社長と、視線が絡み合う――




「あ、あの・・・」


不安になりながらも、仕事と言い聞かせて声を出した。




「今日の仕事はキャンセルしろ」


「えっ――?」


グイッ――

突然、差し出したままの手を引っ張られた。



「っ――!!」



その瞳の色は、私をどう捉えているの・・・?