それからすぐに青信号となり、再び発車した。


エンジン音とBGMが共鳴して、私を急がせる。




社長のすべては、婚約者のモノ――



妾の私は、本来の立場を弁えろ――


そう、言われているような気がした。




もう、タイムリミットのトキだと・・・





「っ…、え、えと・・・

あの私…、後藤 雅貴さんと・・・」


目を瞑って、震える声を絞り出した。



途端に涙が出そうで、グッと歯を喰いしばっている。



必要とされない、無意味な涙を・・・





「・・・後藤――?」


清涼な声で、その名前を反芻した社長。


至って冷静な反応が、さらに心を抉るのに。



「ハ、ハイ・・・

TS商事の・・・、後藤社長です・・・」


名前を挙げれば、誰かは分かっていると思う。


それでも私の口から、ハッキリしておきたい。





いずれ、周知の事実となる前に・・・