エンジンが掛かった車は、一気に加速していく。
高らかでありつつ、静かなエンジン音。
このアウディもまた、スポーツカー。
社長の趣味は、スポーツタイプのようだ。
唯一違うのは、先日のアノ車だけ・・・
「っ・・・」
目の奥がツンときて、慌てて街並みに目をやった。
流れゆく景色が、曖昧な私を急かしていく。
タイムリミットまで、幾許もナイと・・・
だからこそ、安定した走りをみせる車のように。
私もまた、貴方を陰で支えていたい――
鉛のように重いリングから、もう逃げナイから。
「っ・・・しゃ、社長!」
赤信号で停車した時、精悍な横顔に声を掛けた。
奮い立ったトキしか、私は伝えられない。
それなのに・・・・
「・・・結婚するな――」
え・・・・?