いつものように順調な走りで、東条グループ本社へ到着する。
そのまま社長は、エントランス付近で停車させた。
エンジンの停止音が、このトキの終わりを告げる。
今日もあまりに、呆気なく・・・
バタンッ――
助手席のドアを閉めると、会社を仰ぐように見上げた。
此処は国外にも名を轟かせる、建築士設計の自社ビル。
近代的かつ上品さの残る造りで、社内外問わず好評を博している。
社長の就任によって、新築されたばかりの本社――
【拓海キャッスル】
などと揶揄されるのは、仕方がナイ。
「蘭、行くぞ――?」
訝しげな表情をしつつも、やっぱり少し先で構える社長。
「あ、申し訳ございません・・・」
彼のカバンを持っている私は、急いで玄関へと向かった。