階下で足音が聞こえる頃、朝日が昇り始めた。
梅雨真っ只中だけれど、今日は快晴のようだ。
私の心境とは、まるで正反対の陽気。
天気さえ、別離を祝っているの――?
日を見ていても、気分は上昇出来なくて。
吸い寄せられるように、フォトフレームに手を掛けた。
それは拓海が、アメリカへ飛び立つ以前に。
著名な写真家に、撮って貰ったモノ――
『最後だし、写真でも撮ろうか?』
突然呼び出しを受けて、彼の家へと向かった私。
すると、プロ用の機材やカメラが鎮座していて。
スケールの違いに、コドモの私は驚かされた。
『もぉー、ウチのママで良かったじゃん!』
写真家やアシスタントが帰って、静まり返ったあと。
何も知らなかった私は、当然文句を言った。
だって、いざ撮影を始めるとすぐに終了だし。
写真家が残した写真も、たったの30枚。
その仕上がりも、いたってフツーというか。
いつもと変わらない、自然な姿だったから。