ドアマンによって、重厚な扉が開かれた。



その先に広がるモノは、煌びやかな異空間。


雑誌で見掛けるような、バックや装飾品を眺めつつ。


後藤社長と私は、別室へと通された。



VIP顧客は、一般人とは一線を画して接客を受ける。


社長の付き添いで、何度か高級店に立ち寄ったコトがあって。



その際に改めて知った、“世界”の違い――



後藤家も、東条に引けを取らない名門家。


庶民の私が、足を踏み入れられる?


社長と“同じ”世界で、生きていける?


そう思い浮かべる度に、自身を苦しめるだけなのに。



どうしても様々な、疑念を持ってしまった――






「如何でしょうか?」


「蘭は、どれが良い?

俺は蘭の気に入ったモノがいいな」


「まぁ、後藤様はジェントルマンですわね?」


「ハハッ、彼女限定でね?」


私を置き去りにして、会話が続く中。


四方から、満面の笑みと視線が向けられる。