それでも到着するまで、心配していたのも事実。
秘密を抱えた私が、彼に言える権利はナイけれど。
彼ほどの策士には、正直言って怖さが先行する。
こんな風に時を重ねて、彼と過ごすのかと思うと。
アノ日止めた時計の針が逆戻りをしてと、願いたくなる・・・
ガチャッ――
運転士さんがドアを開けると、後藤社長が車外へ出た。
私は当然、待機していたのだけれど。
「蘭も、早く降りて」
車外へ出た彼が再び、顔を覘かせて言った。
「え、私もですか――?」
「当然でしょう?
蘭への買い物で来たのに!」
「え・・・?」
「ほら、いいから!」
「え、あ・・・」
訳も分からないままに、車外へ出されてしまった。
だって此処は、庶民には縁遠いブティック。
ドアマンが待機するような、お店なんて・・・