「今日は、ごちそうさまでした」
「フッ、どういたしまして。
家まで送るから、行こうか?」
平身低頭でお礼を言うと、また一笑されて。
「も、申し訳ございません」
遠慮がちに店外へ出ると、車へと歩を進めた。
専属運転手の車に、私をまず誘導する後藤社長。
私が乗り込むと、続いて彼も乗り込んできた。
目上の人より先に乗り込むのは、タブーだけれど。
きっと彼は、生来のレディファースト体質――
それこそ拒否すれば、顔を潰しかねない。
バタンッ――
それから運転士さんが、後部座席のドアを閉めた。
密室空間にされると、居た堪れナイよ。
だって、この車は・・・
社長が先日購入したメルセデスで、同じ車種。
まるで何かの、因果のように――
ただカラーは違っていて、こちらはブラック。
それだけでも、凄く救われたと思う。
もし…、これがホワイトだったのなら。
今の私では、涙を我慢出来なかった・・・