此処で、上手く切り返しが出来たなら。
そう思っているけれど、到底ムリな話。
一筋どころか、二筋縄でもいかない人には・・・
「それじゃ、蘭・・・」
「は、はい・・・」
ワイングラスを置いて、ジッと私を見据える。
その視線ひとつが、すぐに心を萎れさせてしまう。
社長に縋りたくなるキモチを、再燃させて・・・
「秘書なら当然、明日は彼の同行だよね?」
「は、はい・・・」
YESしか求められていない問いに、思わず固唾を呑んだ。
軽く相槌を打つ彼が、弧を描いて笑うだけで。
齎されるすべてに、恐怖を感じてしまう・・・
「よし…、蘭から話しておいてくれる?」
「…えっ・・?」
目を見開かせつつ、驚きの声が漏れてしまった。
「どうしてって…、顔をしているね?」
「…っ――」
予想通りといった顔で、笑顔を向けられては。
ただ、表情を失くすコトしか出来ない。