大好きな人との道を、自ら閉ざすコト。
これこそ何よりの、拷問だと思う・・・
私を一蹴したあとは、スッと身体を引き離した。
そうして席へと戻り、食事を再開させていて。
フォアグラのソテーとともに、赤ワインを嗜む彼。
こちらは、意欲減退しているというのに・・・
「蘭…、明日の東条君のスケジュールは?
急で悪いけど、明日は都合が良いんだよね。
彼の予定次第で、お伺いしようと思うんだけど。」
尋ねておきながら、また余裕綽々な表情を見せる。
まるで、私の反応を楽しむかのように。
「明日は…、社長の都合が悪いかと・・・」
背中にツーと、冷たいモノが流れつつ答えた。
別れを惜しむ時間さえ、与えて貰えないらしい。
「どこかへ出掛けるの?」
「えぇ…、詳しくお教え出来かねますが・・・」
「そう?」
これは秘書として働く私の、ささやかなプライド。
守秘義務とともに、自分の密かな感情も守った。
彼にはまた、愉快でしかナイようだけれど・・・