カキーン。 ボールがバットに当たる音がした。 俺は空を自由に飛んでいくボールをじっと見つめる。 ボールはフェンスの向こう側の、草むらへと消えていった。 「片瀬!! お前、練習試合だからって気ぃ抜いて投げてんじゃねぇだろうな!!」 後ろから声がして。 俺は振り返って、バッターボックスに立っている桃山先輩を見た。 「すいません」 帽子のつばを掴んで、小さく礼をする。