「”逃げた”っていう意識が

 強いからさ。

 大学行ってたときも、

 人の相談乗ったりしてるときも、

 いつもどっかで引け目感じてた。」

それを聞いて、愛は思った。

私達が出会ったのはきっと、

偶然なんかじゃなくて、

ちゃんと意味があったのだ、と。

傷のなめあいじゃなく、

それぞれが向き合うことによって、

前に進めるようにと、

神様が出会わせてくれた。

「だから、諦めてたんだ。

 誰かを愛することも、

 素直に夢を追うことも。

 ……愛ちゃんに会うまでは。」

宙を眺めていた櫻井の視線が

愛へと移された。

「今、こんなこと言うべきじゃないって

 本当は分かってるんだけど…。

 好き。愛ちゃんが、好き。」

愛の目からは涙が溢れた。

櫻井の言葉を聞いた瞬間、

なんだかとても温かい気持ちが

愛を包んだ。

「ありがとう…っ。」

将来性とか、収入がどうとか、

そんなこと関係ないって、

ただ純粋に愛しいって、

思えたから。

頭で考えるより心が、

確かに”Yes”と答えを出したから。

「私も好き…っ。」

そんな愛を見て、

櫻井はホッとした様子で

愛を抱きしめた。