「きっとね、

 私も悪いの。」

「え…?」

櫻井は、驚いた。

あんな目に合わされて、

それでもなお

自分のせいだと言うなんて、

どれほど優しいのだろうと思った。

「私、あの人のこと

 愛してたつもりだった。

 ”愛す”って言葉の意味を、

 理解できてなかったって思う。」

「……優しいね、愛ちゃんは。」

呆れてしまうくらいに。

「そんなことないよ。

 嫌われるのが、怖いだけ。」

一瞬、愛の表情が曇った。

「私、いじめられてたの。

 引くでしょ?

 プライドばっか高い、

 嫌なヤツだったな、って思う。」

櫻井は、小さく首を横に振った。

誰もが起こす過ちだと思ったから。

最初から完璧な人間なんて

いるはずもなくて、

失敗して、後悔をするから

人は変わるのだ。

「オレの実家、病院なんだ。」

「え。」

櫻井の発言に、

愛は驚いた。

「オレ……逃げたんだ。

 毎日勉強ばっかの毎日で、

 兄貴が超名門の大学に入ったって

 プレッシャーもあってさ。

 全部投げ出した。」

こういうとき、

どんな言葉をかければいいのか、

愛には分からなかった。