「さよなら…。」

愛がくるり、と

善彦に背を向けると、

善彦が後ろから

愛を強く抱きしめた。

「ちょ、善彦さん…っ。」

「嫌だ、行かないで。

 僕はあなたがいないと、

 到底生きていけない。

 全部あなたが嫌な所、

 直しますから…っ。」

いつになく必死な

善彦を見て、愛の心は

ひどく痛んだ。

「ごめんなさい…っ。」

泣きそうだった。

1度は本気で愛した人だから。

本当はね、

こんな別れを

望んでいたわけじゃなかった。

「どうしても行くなら…。

 力ずくでも、

 僕のモノにします。」

そういって、善彦は

愛を連れて

ズンズンと歩いていった。

そしてしばらく歩くと

思いがけない場所に

辿りつき、

愛は身を強張らせた。