「莉緒? 気がついたのか?」

莉緒が目を開けて、俺を見ていた

「赤ちゃんは?」

俺が首を横にすると、莉緒が唇を噛んだ

「そっか……ごめんなさい」

莉緒が謝った

「莉緒が謝ることじゃない
俺こそ、守れなくてごめん」

「ねえ、桜嗣…」

「ん? 何?」

「どうして指輪、してないの?」

莉緒の視線が俺の薬指にいっていた

俺も自分の指を見つめる

「シャワー、浴びるときに外したんだ
んで、つけ忘れた」

俺が笑うと、莉緒が涙をためて微笑んだ

「嘘つき
シャワー浴びる時も指輪外したことないくせに」


「……ごめん」

俺は莉緒の手を握った

莉緒の指が俺の手を強く握りしめる

「私、お父さん嫌い
私から大切なモノをどんどん奪っていく
だから……お父さん、出て行ってよ」

か細い声で、莉緒が言った

その言葉を聞いた義父さんは悔しそうに眉をひそめると、大股で病室を出ていった

「莉緒、いいのか?」

「うん、だって桜嗣を殴ったから」

「え?」

何で知ってるんだよ!
莉緒は手術中だっただろ?

どうして……

「なあ、莉緒…どうして」

莉緒はまた瞼を閉じてしまった

寝息が聞こえる

次に目を覚ましたら、莉緒に聞けばいいっか
俺は莉緒の手の甲にキスをした