俺は旅行鞄に入っている離婚届を出すと、破ってゴミ箱に捨てた

「おいっ!」

「莉緒ときちんと話をさせてください
それくらいの時間はいただけませんか?
莉緒が別れたいと言うのなら、別れます
俺は別れたくない
莉緒と離れて暮らすなんて考えられない」

「貴様、これ以上、莉緒を不幸にさせて楽しむ気か?」

「幸せにします」

莉緒の父親の顔が怒りで歪むのがわかった

不幸になるかもしれない
傍から見たら、不幸に見えるかもしれない

でも俺も莉緒も、笑顔で『幸せだ』と言える家庭にしたい

不幸にしたくて一緒にいるんじゃない

幸せになりたくて一緒にいるんだ

誰も不幸な生活を望んで、結婚する人はいないだろ?

「幸せにできるのか?
お前みたいな人間に」

「俺みたいな人間だから幸せにできるんです」

もう逃げない

俺は莉緒を愛してる

その気持ちは誰にも負けない

負けるものか!

「わたしも……一緒にいたい」

下から声が聞こえた

え?
莉緒?

俺はベッドに横になっている莉緒の顔を見つめた