「私たちが莉緒と桜嗣くんの交際を反対して、莉緒が桜嗣くんを諦めてからの2年間、あの子がどんな生活をしていたか、知ってるの?
貴方は莉緒が苦しんでいるのも知らずに、愛人だった女と戯れてたものね
私はずっと見てきたからわかる
莉緒がどれだけ桜嗣くんを想っていたか」

「こいつは莉緒を不幸にするだけだ」

「不幸?
それは莉緒に聞かなくちゃわからないわ」

「聞かなくてもわかる
お前も突っ立ってないで、さっさと出ていけ!」

義父さんが俺を睨んだ

「すみません」

俺は頭をさげると、病室を出た

廊下に立っていた紫音はすでに理解しているようだ

俺の肩を叩くと、瞼を閉じて大きくうなづいた

「男同士の約束かあ」

紫音が納得したように呟いた

「莉緒を想っての決断だ」

「その決断、間違ってると思うよ
麻酔から目を覚まして、見たい顔は桜嗣の顔であって
両親の喧嘩している姿じゃないと思う」

「…かもしれないけど
今回のこと、俺は責任を感じてる」

「だからって別れるの?
それって安易すぎじゃない?
男が楽になりたい言い訳よ
女の気持ちを無視してるもの
それに悪いのは春って女で、責任を感じるのも春って女よ」