『桜嗣、どこに行ってるんだよ!
莉緒さんの手術、終わったぞ
子供は残念だが、莉緒さんは無事だ
早く病院に来いよ』

離婚届けと睨めっこしている俺の横で携帯が震えた

莉緒が無事だった

「良かったぁ」

紫音からのメールを見て、俺は大きく息を吐いた

莉緒が無事
莉緒は生きている

『あ、それと着替え、持ってきてやれよ
あと入院の手続きとか…いろいろあんだから
夫としてさっさと動けよぉ』

数分後にまた紫音からメールが届く

そうだな
夫としてしっかりしないとな

夫婦として過ごした期間が短かったかもしれないが

夫として、きちんと責任を果たさないと

俺はボールペンを握ると、離婚届に署名捺印をした

旅行鞄に莉緒の着替えや日用品類を詰め込むと、外ポケットに離婚届を入れた

俺の薬指にあるリングにキスをすると、するりと指から外した

「男同士の約束なんだ」

テーブルの上にリングを置くと、俺は旅行鞄を持って立ち上がった