『さっさと帰って離婚の書類を書いてこい』

義父さんに言われて、俺は区役所に行く

離婚届をもらうと、家に帰る

何の音もしない家
莉緒と暮らし始めてからは、必ず莉緒が家にいてくれた

俺がドアを開けると、スリッパの音をたてながら玄関に笑顔を見せてくれた

「また……フランスに逃げるかな」

俺は靴も脱がずに、玄関にうずくまった

逃げたくないのに
莉緒のそばにずっと一緒にいたいのに

莉緒のつわりが治まったら、式をあげたいとか思ってたのに

全部、ダメになるのか?

「莉緒…りお……」

俺は目頭が熱くなった

呼吸が荒くなると、涙がこぼれた
頬に熱いものが流れていった


「俺を一人にしないでくれよ」